■天宝大寨そろそろ彼の家が近くなった頃、ホテルでもらった写真集にある「天宝大寨」はこの近くだと言います。じゃあ行ってみようという事になり、また少し寄り道です。
天宝大寨の「寨」とは砦の意味です。今回、私がたまたま来た大順郷と大順場は標高207m〜822mにある約100kuの集落で、境界部分には絶壁もあるなど、自然の要塞になっているようです。
暫く走ると急な下りになり、眼下にははるか下に、初日に来た新妙の町が見えます。

たしかにこの地は高い山の上にあると納得です。
この地には古くからの言い伝えが農村の民謡として残っているそうです。
“天宝大寨石砚台,四边都是陡石岩。中间架起牛儿炮,神仙鬼怪不敢来”
うまく訳せませんが「天宝大寨の石硯台の周りはすべて急で険しい岩石。境には砲台があるようなもので、仙人や鬼も来る勇気が無い」というような意味と思われます。
明清の時代には、地元の豪農達は財産を守る為に急峻な山に48の砦を作ったそうです。現在も10の砦が残っているとのこと。
このような山ですから、下り坂はとても急で、帰りにこれを車で上れるだろうかと心配した程でした。
中腹あたりでそろそろ引き返そうという事になりました。
■昼食何とか登り終え、彼の家にたどり着きました。そこは、最初に彼に道を聞いた付近でした。もう一つ見たい旧跡が残っていた為、彼から「周煌墓は行かなくていいのか? もし時間があれば、昼食後に行こう。自分が作るから一緒に食べよう!」との事。
それから彼の家の広い台所で料理作りが始まりました。
奥さんが働いているので、今は炊事洗濯は彼の担当とのこと。手慣れた感じです。なお、重慶では、ご主人が働いていても、料理は男性が作る事の方が多いようです。

丸いまな板の上で、手際よく肉や唐辛子を刻みます。

鍋を置く丸くくり抜いた穴が三つあり、そこに鍋が置いてあります。火は下から紙や枯れ木を入れて煮炊きします。

火力は大丈夫かなと心配したのですが、ガスと何ら変わりません。
近くで腹減ったと騒いでいた猫もそのうち大人しくなり、近くで寝ています。

料理が出来上がると、彼が手際よく食卓に並べます。ご飯はお粥を作ってくれました。

重慶ですので、料理は多少は辛いものの、とても美味しく、男二人の楽しい食事でした。
食事が終わり、最後の「周煌墓」に向かいます。
■周煌墓彼の家から、それほど遠くない場所でしたが、途中から車がいけなくなっており、そこに彼の友人がバイクで待ってくれていました。バイクの後方に彼と私が乗り、1キロほど走りました。そこで降りて、三人で暫く畦道を歩きました。
こんな所にあるのだろうかと思っていたら、ほどなくして何やら門のようなものが見えます。

近くまで来ると、立派な門が田んぼの中に建っています。なぜこんな所に、こんなものが?!と驚かざるを得ませんでした。

門をくぐって裏に回ると、二頭の獅子が互いに睨み合うようにして座っています。よく見ると細かい彫刻も施されています。


彼が田んぼの中を指さしたので、目を向けると草むらに隠れるようにして「重慶市保護文化財」の案内石版があります。

門の上方に墓があると教えてくれましたが、よく見えません。

二人が山に登り始めたので、私も後から着いて行きましたが。しかし残念ながら、竹林に阻まれて先に進めません。仕方無く見るのを断念。

涪陵人である周煌(1714-1785年)は嘉慶皇帝の先生で、没後1792年にこの墓と門が作られたとのこと。墓の周りには石像、石馬などが建てられていたそうたが、破壊されて今は墓しか残っていないそうです。
こんな田畑の中に、こんな精緻な建造物がある事は驚かずにはいられませんが、保存状態が悪いのはとても残念なことです。
重慶市政府は、文化財と指定して案内板を建てるまでが仕事で、その後の保護に対しては、予算を取ってないのではなかろうかと、今回、いくつかの旧跡を見て感じました。綺麗に整備すれば、立派な観光資源にもなるだろうにと、他国の事ながら案じてしまいました。
■エピローグ帰りは車を駐車した場所までまたバイクに乗せてもらいました。それから彼の家まで送り届けるとそこでお別れです。彼からは「夕方には家内が帰ってくるから、それまで居たら」と言われましたが、暗くならないうちに帰ることにしました。
一緒にいたのは5,6時間でしたが、案内してもらったり、昼食を作ってくれたりと随分長い付き合いのように感じ、別れはちょっと寂しいものがありました。
結局、重慶十大古鎮の一つの「龍興鎮」に行く予定が、高速道路を間違えて、全く違う土地に来てしまい、そこで目的地をやはり重慶十大古鎮の一つである「龍譚鎮」に変更したもののそこに行き着く前に、別の名所旧跡や大順場の古鎮を見て帰ることになりました。
観光地化されていない為、案内板などは不備でしたが、その代わり、二人の素晴らしい人達に出会い、稚拙な中国語で二人とも困ったと思いますが、お陰でとても有意義で楽しい小旅行ができました。
新妙と大順郷の二人の友へ >
どうもありがとうございました。
<このシリーズ、終わり>